AIが解雇予告を「30営業日前」「1か月前」と判定する2026|暦日30日・予告日は数えない・手当は平均賃金、取り違えないための5つの手順
AIに解雇予告の期限を計算させると「30営業日」「1か月前」と誤ることがあります。労働基準法20条の暦日の数え方、予告手当の日数短縮、試用期間の例外と5つの手順を解説します。
「解雇予告は30営業日前までに必要です」。AIに解雇の手続きを確認すると、こう答えることがあります。しかし、労働基準法20条の30日は暦日です。土日や祝日も含めて数えます。
逆に、予告した当日を1日目に数えると、期限が1日足りなくなります。予告手当を「月給1か月分」で計算する誤りもよく見られます。この記事では、AIが取り違える4つのポイントと、正しく判定させる5つの手順を説明します。
解雇予告の基本ルール
労働基準法20条は、使用者が労働者を解雇する場合について、次のように定めています。
- 少なくとも30日前に予告する
- 予告しない場合は、平均賃金の30日分以上の解雇予告手当を支払う
- 予告の日数は、平均賃金を1日分支払うごとに1日ずつ短縮できる
正社員だけでなく、パートやアルバイトにも原則として適用されます。
| 予告のタイミング | 必要な予告手当 |
|---|---|
| 30日以上前に予告 | 不要 |
| 20日前に予告 | 平均賃金10日分以上 |
| 10日前に予告 | 平均賃金20日分以上 |
| 即日解雇 | 平均賃金30日分以上 |
AIが取り違える4つのポイント
1. 30日を営業日や「1か月」と読む
最も多い誤りです。「30営業日」で数えると土日が除かれるため、予告日は実際の期限より10日以上前倒しになります。これは違反ではありませんが、退職日の設計が大きくずれます。
逆に「1か月前」と読むと、31日の月をまたぐ場合は足りますが、2月をまたぐ場合は日数が不足することがあります。条文の単位はあくまで30日です。
2. 予告した当日を1日目に数える
期間の計算は、民法140条により初日を算入しないのが原則です。9月30日付で解雇する場合を例にします。
- 8月31日に予告:9月1日から9月30日までで30日 → 足りる
- 9月1日に予告:9月2日から9月30日までで29日 → 1日不足
AIは「9月1日から数えて30日」と当日を含めて数えがちです。1日不足すると、その分の予告手当が必要になります。
3. 予告手当を月給や所定日数で計算する
予告手当の基準は、労働基準法12条の平均賃金です。原則として、算定事由の発生日以前3か月間の賃金総額を、その期間の暦日数で割って求めます。AIは「月給1か月分」や「日給×所定労働日数」で答えることがあります。
月給30万円の人でも、平均賃金30日分は30万円ちょうどになるとは限りません。3か月の暦日数が92日なら、平均賃金は約9,782円です。30日分は約29万3,000円になります。残業代などが多い月を含めば、逆に月給を上回ることもあります。
4. 試用期間中なら予告は不要と一律に判定する
労働基準法21条は、試用期間中の人を予告の対象から外しています。ただし、14日を超えて引き続き使用された場合は適用されます。AIは「試用期間中は予告不要」とだけ答え、この14日の条件を落とすことがあります。
21条には、ほかにも例外があります。日々雇い入れる人(1か月を超えると適用)、2か月以内の期間を定めて使用する人、季節的業務で4か月以内の期間を定めて使用する人です。いずれも期間を超えて使用すると予告が必要になります。
AIに正しく判定させる5つの手順
手順1:数え方のルールをプロンプトに書く
AIの記憶に任せず、数え方を明示します。
解雇予告の期限は労働基準法20条で判定してください。
・30日は暦日です(土日・祝日を含む)
・予告した日の当日は数えません(翌日から数える)
・不足する日数1日ごとに、平均賃金1日分の予告手当が必要です
・「営業日」「1か月」に置き換えないでください
手順2:日付の計算は表にして出させる
「予告日」「解雇日」「数えた日数」「不足日数」の4列で出力させます。答えだけを出させると、途中の数え間違いに気づけません。カレンダーアプリや表計算ソフトで日数を検算すると、確実です。
手順3:境界値のテスト問題で確認する
本番の案件を渡す前に、答えが分かっている問題を解かせます。
| 予告日 → 解雇日 | 正しい判定 |
|---|---|
| 8月31日 → 9月30日 | 30日。手当不要 |
| 9月1日 → 9月30日 | 29日。1日分の手当が必要 |
| 1月31日 → 3月2日(平年) | 30日。手当不要 |
| 9月20日 → 9月30日 | 10日。20日分の手当が必要 |
4問のうち1問でも外れたら、そのプロンプトは使いません。特に2問目と3問目で誤りが出やすいです。
手順4:平均賃金の元データを渡す
予告手当を計算させるときは、直前3か月分の賃金総額と暦日数を渡します。賃金締切日がある場合は、直前の締切日から遡ります。ボーナスなど3か月を超える期間ごとに払う賃金は含めません。日給制や時給制の人には最低保障額の計算もあるため、前提として伝えてください。
手順5:例外と支払時期を人が確認する
労働者の責めに帰すべき事由や天災による解雇でも、予告を省くには労働基準監督署長の除外認定が必要です。AIが「懲戒解雇なので予告不要」と答えても、そのまま使ってはいけません。
また、予告手当は解雇の申し渡しと同時に支払うのが原則とされています。後日の給与と一緒に払う運用は、見直しが必要です。
違反した場合のリスク
予告も手当の支払いもせずに解雇した場合、労働基準法119条により、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象になります。裁判所が未払い分と同額の付加金の支払いを命じることもあります。
なお、予告や手当の手続きを守っても、解雇そのものが有効になるわけではありません。客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要です(労働契約法16条)。
まとめ
- 解雇予告の30日は暦日。営業日や「1か月」に置き換えない
- 予告した当日は数えない。翌日から30日を確保する
- 予告手当は月給ではなく平均賃金で計算し、不足日数分だけ短縮できる
- 試用期間の例外は14日まで。超えたら予告が必要
- 懲戒解雇でも、予告を省くには除外認定が必要
解雇の手続きにAIを使うときは、まず4問の境界値テストから始めてください。個別の事情で判断が分かれることも多いため、迷う場合は社会保険労務士や弁護士、管轄の労働基準監督署に確認してください。
AI Scout編集部
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