AIが「退職は1か月前に申し出ないと辞められない」と答える2026|無期雇用は民法627条で申入れから2週間、月給制の制限は会社側だけ、取り違えないための5つの手順
AIに退職の申し出期限を聞くと「就業規則の1か月前が必要」と答えることがあります。無期雇用なら民法627条で申入れから2週間で終了します。月給制の制限は2020年改正で会社側だけです。誤りやすい4点と5つの手順を解説します。
「来週末で辞めたいと言われました。就業規則には1か月前と書いてあります。認めなくてよいですか」。AIに聞くと「就業規則で1か月前と定めていれば、それより早くは辞められません」と答えることがあります。これは正確ではありません。
期間の定めのない雇用(無期雇用)では、民法第627条第1項により、労働者はいつでも退職を申し入れられ、申入れの日から2週間で雇用は終わります。この記事では、AIが取り違えやすい点と、正しく判定させる手順を解説します。
退職の申し出に関するルールの整理
| 場面 | ルール | 根拠 |
|---|---|---|
| 無期雇用の労働者が辞める | 申入れから2週間で終了 | 民法627条1項 |
| 月給制など期間で報酬を定めた場合 | 「当期の前半に申入れ」の制限は会社からの解約だけ | 民法627条2項(2020年4月改正) |
| 会社が解雇する | 30日前の予告か、30日分以上の解雇予告手当 | 労働基準法20条 |
| 有期雇用の労働者が途中で辞める | 原則は「やむを得ない事由」が必要 | 民法628条 |
| 1年を超える有期契約で1年たった後 | いつでも退職できる(一部の専門職・60歳以上を除く) | 労働基準法137条 |
AIが取り違えやすい4つの点
1. 「就業規則の1か月前が優先する」と答える
最も多い誤りです。就業規則で「1か月前までに申し出る」と定めること自体はよくあります。円滑な引き継ぎのための目安として意味があります。しかし、無期雇用の労働者が2週間前に申し入れた場合に、退職そのものを拒むことは難しいと考えられています。厚生労働省の労働局も、申入れから2週間で退職の効力が生じると案内しています。
2. 「月給制なら月の前半に申し出る必要がある」と答える
改正前の民法627条2項では、月給制の場合は「当期の前半」に申し入れ、次期以後に退職する決まりでした。2020年4月の民法改正で、この制限は使用者からの解約の申入れだけに限られました。今は月給制の労働者も、申入れから2週間で辞められます。
3. 「辞める側も30日前の予告が必要」と答える
労働基準法20条の30日前予告は、会社が解雇するときのルールです。労働者が辞めるときには当てはまりません。解雇と退職の向きを取り違えると、必要以上に退職日を先へ延ばしてしまいます。
4. 「契約社員も2週間で辞められる」と答える
有期雇用は別のルールです。契約期間中に辞めるには、原則として病気や家族の介護など「やむを得ない事由」が必要です(民法628条)。ただし、1年を超える期間の有期契約は、1年たった後はいつでも退職できます(労働基準法137条)。高度な専門知識を持つ人や60歳以上の人など、一部は対象外です。
具体例:10月6日に退職を申し出た正社員
月給制で無期雇用の正社員が、2026年10月6日に「退職します」と申し入れたとします。就業規則には「1か月前までに申し出る」とあります。
| 判定 | AIの誤答 | 正しい判定 |
|---|---|---|
| 退職できる最短の日 | 11月6日以降(就業規則の1か月) | 申入れから2週間を経過した時点(10月20日が目安) |
| 月給制による制限 | 月の前半に申し出ないと翌々月 | 労働者からの退職には制限なし |
| 会社が退職を拒めるか | 拒める | 2週間たてば退職の効力が生じる |
2週間の数え方は、民法の初日不算入の原則に従います。実務では退職日を書面で確認し、残る有給休暇の扱いも話し合います。
会社が実務で気をつけたい点
就業規則の「1か月前」は、引き継ぎのお願いとして伝えるのが現実的です。退職届を受け取らない、退職を認めないと言い続けると、トラブルの原因になります。
また、退職までの期間に残った有給休暇の取得を求められた場合、会社は原則として拒めません。時季変更権は、ほかの日に変更できることが前提だからです。引き継ぎの計画は、有給休暇の残日数とあわせて立てます。
AIに正しく判定させる5つの手順
手順1:雇用の種類をプロンプトに書く
「無期雇用か有期雇用か」「有期なら契約期間と開始日」を最初に入力します。この区別がないと、AIは無期雇用のルールと有期雇用のルールを混ぜて答えます。
手順2:正しいルールを明記する
「無期雇用の労働者からの退職は、申入れから2週間で終了(民法627条1項)。月給制の制限は2020年改正で使用者からの解約だけ。30日前予告は解雇のルール」と書きます。
手順3:境界の4問でテストする
| テスト | 正解 |
|---|---|
| 無期雇用・月給制の社員が月の後半に申し出た | 申入れから2週間で退職できる |
| 就業規則が「1か月前」で、2週間前に申し出た | 2週間たてば退職の効力が生じる |
| 1年契約の契約社員が3か月目に辞めたい | 原則やむを得ない事由が必要 |
| 3年契約の社員(50歳・一般職)が1年半で辞めたい | いつでも退職できる |
1問でも外れたら、そのプロンプトは使いません。
手順4:申入れ日と退職日を日付で出させる
「申入れ日」「退職の効力が生じる日」「根拠条文」を表で出させます。日付と条文が並ぶと、就業規則の1か月で計算したのかをすぐ見分けられます。
手順5:就業規則の書き方を見直す
就業規則の退職条項が「1か月前までに申し出なければ退職を認めない」となっていないか確認します。「引き継ぎのため、できるだけ1か月前までに申し出ること」のような書き方が無難です。判断に迷う場合は、労働局の総合労働相談コーナーか社会保険労務士に確認してください。
まとめ
- 無期雇用の労働者は、申入れから2週間で退職できる(民法627条1項)
- 月給制の「当期の前半」の制限は、2020年改正で会社からの解約だけになった
- 30日前予告は解雇のルールで、労働者の退職には当てはまらない
- 有期雇用は原則やむを得ない事由が必要で、1年超の契約は1年後から自由に辞められる
- 就業規則の「1か月前」は引き継ぎの目安として伝える
退職の判定にAIを使うときは、まず4問のテストから始めてください。会社から解雇するときの予告日数は解雇予告30日の記事で解説しています。
出典:大阪労働局「退職に関するよくあるご質問」(https://jsite.mhlw.go.jp/osaka-roudoukyoku/yokuaru_goshitsumon/jigyounushi/taisyoku.html)、民法第627条・第628条、労働基準法第20条・第137条
AI Scout編集部
AIツール・SaaS専門のレビューチーム。最新のAI技術動向を追い、実際にツールを使用した上で、正確で信頼性の高い情報を提供しています。