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AIが「本人の同意書があれば損害額を給与から天引きできる」と答える2026|労基法24条の全額払いと労使協定、賠償予定の禁止、AIの誤りを見抜く5つの手順

AIに給与天引きを聞くと「同意書や就業規則があれば損害額も控除できる」と答えることがあります。労基法24条では、法令か過半数代表との書面協定がなければ控除できません。AIの誤りを見抜く5つの手順を解説します。

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「社員が社用車をぶつけた。修理費30万円を毎月の給与から天引きしたい」とAIに聞くと、「本人から同意書をもらえば控除できます」と答えることがあります。「就業規則に定めておけば天引きできます」と続く答えもあります。

どちらも条文と合いません。労働基準法第24条第1項は、賃金をその全額支払うよう定めています。控除できるのは、法令に定めがある場合か、労働者の過半数で組織する労働組合(ない場合は過半数代表者)との書面による協定がある場合だけです。この記事では、AIが取り違えやすい点と、正しく答えさせる手順を説明します。

賃金控除の基本ルール

項目条文の内容根拠
原則通貨で、直接労働者に、その全額を支払う第24条第1項本文
控除できる場合①法令に別段の定めがある(所得税・住民税・社会保険料など)第24条第1項ただし書
控除できる場合②過半数労働組合または過半数代表者との書面による協定がある第24条第1項ただし書
支払の時期毎月1回以上、一定の期日を定めて支払う第24条第2項
違反した場合30万円以下の罰金第120条第1号

この書面協定は、一般に「24条協定」や「賃金控除協定」と呼ばれます。社宅費や購買代金、親睦会費など、控除する項目と金額の決め方を協定に書いておきます。

AIが取り違えやすい5つの点

1. 「本人の同意書があれば控除できる」と答える

第24条の例外は「法令」と「過半数代表との書面協定」の2つです。個々の社員の同意書は、条文上の例外に入っていません。社宅費のような日常的な控除でも、まず事業場単位の協定が必要です。

2. 「就業規則に書けば天引きできる」と答える

就業規則は会社が作成するものです。第24条が求めるのは、労働者の過半数を代表する側との書面による協定です。就業規則に控除の規定があっても、協定がなければ控除の根拠になりません。

3. 「損害賠償額は給与と相殺できる」と答える

会社が一方的に損害賠償の請求額を賃金と相殺することは、全額払いの原則に反するとした最高裁判決があります(関西精機事件・最高裁昭和31年11月2日)。一方で、労働者の自由な意思に基づくと認められる合理的な理由が客観的にある同意なら、相殺が有効とされた例もあります(日新製鋼事件・最高裁平成2年11月26日)。ただしこの判断は厳格です。「同意書があるから大丈夫」とは言えません。

4. 「遅刻1回3,000円の罰金を契約に書ける」と答える

第16条は、労働契約の不履行について違約金を定めたり、損害賠償額を予定したりする契約を禁じています。「遅刻1回3,000円」「途中で辞めたら20万円」のように、あらかじめ金額を決める契約はできません。就業規則による減給の制裁は別の制度で、第91条の上限があります。

5. 「前借りした分は給与から差し引ける」と答える

第17条は、前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金の相殺を禁じています。「働いて返す」ことを条件にした貸付を、給与で一方的に回収することはできません。

具体例:月給25万円の社員が社用車を損傷した場合

やり方判定
修理費30万円を、会社の判断で翌月給与から全額差し引く不可(一方的な相殺は全額払い違反)
同意書を取り、毎月5万円ずつ6か月差し引く原則不可(協定がなく、同意の有効性も厳格に判断される)
給与は全額支払い、修理費の負担は別途話し合う可(賠償額は過失の程度などで制限されることがある)
24条協定に定めた社宅費3万円を毎月差し引く可(協定の範囲内)
所得税・住民税・社会保険料を差し引く可(法令の定め)

この例で会社が修理費を回収したい場合は、給与を全額支払ったうえで、別の手続きで請求するのが確実です。業務中の事故では、社員に請求できる額が損害の一部に限られた裁判例もあります。

AIに正しく答えさせる5つの手順

手順1:条文をプロンプトに貼る

「労働基準法第24条第1項:賃金は通貨で、直接労働者に、その全額を支払う。法令に別段の定めがある場合、または過半数労働組合・過半数代表者との書面による協定がある場合は、賃金の一部を控除できる」と貼ってから聞きます。条文がないと、AIは民法の一般的な相殺の考え方で答えがちです。

手順2:控除の項目と協定の有無を入力する

差し引きたい項目(税・保険料・社宅費・損害額など)と、24条協定があるか、協定にその項目が書かれているかを入力します。答えはこれらで変わります。

手順3:境界の5問でテストする

テスト正解
本人の同意書だけで社宅費を控除できるかできない(書面協定が必要)
就業規則の規定だけで控除できるかできない(書面協定が必要)
損害賠償額を会社が一方的に相殺できるかできない
「遅刻1回3,000円」を契約で決められるかできない(第16条)
所得税・社会保険料の控除に協定は要るか要らない(法令の定め)

1問でも外れたら、そのプロンプトは使いません。

手順4:控除の一覧表を出させる

「控除項目」「根拠(法令/24条協定)」「協定の該当条項」「金額」の表を出させます。根拠の列が「同意書」や「就業規則」になっている行があれば誤りです。

手順5:協定書と窓口で確かめる

最後に、自社の24条協定の現物を確認します。迷う場合は、所轄の労働基準監督署に相談してください。

まとめ

  • 賃金は全額支払いが原則で、控除できるのは法令の定めか24条協定がある場合だけ
  • 本人の同意書や就業規則の規定だけでは、控除の根拠にならない
  • 損害賠償額の一方的な相殺は認められず、同意による相殺も厳格に判断される
  • 違約金や損害賠償額をあらかじめ決める契約は第16条で禁止されている
  • 働くことを条件とした前貸金と賃金の相殺は第17条で禁止されている

減給の制裁の上限は減給の制裁の記事で、未払い賃金の時効は賃金の時効の記事で解説しています。

出典:労働基準法 第16条・第17条・第24条・第91条・第120条(e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049)

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執筆・監修

AI Scout編集部

AIツール・SaaS専門のレビューチーム。最新のAI技術動向を追い、実際にツールを使用した上で、正確で信頼性の高い情報を提供しています。

公開日: 2026年10月8日
最終更新: 2026年10月8日